『竜胆の乙女 わたしの中で永久に光る』fudaraku・感想

読書ろぐ。

ネタバレ感想

前半の幻想小説部分は、少年「嶺」が書いた小説がもとになっている、本来の主人公「里茉」の紡いだ物語という設定になっています。

カウンセラーである「堀出」が、里茉という不登校の女子高生のカウンセリングを担当することになった。その会話の途中で、とつぜん里茉が語り出した長い長い物語。

それが「おかととき」に相対することとなる幻想物語。

その物語は、里茉のいとこの少年、嶺の書いた小説がベースになっているのだけれども、途中で話の展開はもとになった小説ともかけ離れていく。本来の小説では主人公である「菖子」は幾多の苦難を退けて、新たな未来を掴む。

けれど、里茉はその通りに展開させず、あえて「菖子」にたくさんの苦難を与えて、それでも彼女が前を向けるか、立ち向かっていけるかを、自分の境遇と重ねて思考実験をしていたのだった。

という物語でした。

万策尽きて、途中で「菖子」が膝をつきそうになったときに、里茉は初めて、傍聴者であった堀出に助けを求める。

「もうわたしにできることはない。(中略)あとはあなたがなんとかしてください、堀出さん」

堀出は、物語の中で、「菖子」が戦い続けられるよう、いろんな提案をして、物語をラストへと導く役目を与えられる。それが里茉の未来のためだと信じて。

 

一見、ファンタジー作品だと思わせておいて、実はそれが、現実で大変な目に遭っている主人公が、現実逃避やいろんな理由のために、想像の中で繰り広げていた物語だった、という形式の話はいくつか読んだことがありました。最初は、なるほど、その系統の作品なのか、と思いました。

でも、単純に、妄想で造りあげた世界ではなくて、あくまで「思考実験」だというのが面白いなと。

あくまで語り手は「里茉」。

行き詰まった物語の行く末を託されたのは、第三者のカウンセラーの「堀出」。

堀出が、あれをしてはどうか、これはしてはどうか、といろんな提案をして、里茉がそれはダメだ、それならこうなる、といろいろと対応していくのが、なんだかTRPGのGMとプレイヤーのようにも感じました。里茉の中には、確固たる幻想の世界が存在していたのですね。その中で、未来への展望をなんとか開けていこうとする。

異形の脅威「おかととき」の正体も、現実で里茉が恐ろしく思っていたある人物がもとになっていた、それが物語の中で消え去った時、彼女にも少しずつ現実での変化が訪れればいいのですが。

物語の主人公「菖子」とともに歩んでいくと決めた里茉は、きっと前へと進めると思っています。

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