『出版禁止』長江俊和・感想

読書ろぐ。

ネタバレ感想

若橋呉成こそカミュの刺客でした。

というお話だったのですが、問題は彼はいつ死角になったのか。

彼の視点では、最初からこの心中事件に傾倒していたのですが、それすら刺客としての、無意識下での執着だったのではないのかなと思います。

若橋は過去に病を患ったことがあるという描写がさらっとあったので、その時点ですでにカミュの刺客として(自覚なく)仕込まれていたんだろうなあと思いました。病そのものが仕込みなのか、治療といっしょに仕込まれたのかはわかりませんが。

高橋を尋ねるシーンで、催眠術にかけられているような描写があるけれども、あの短い時間で(あくまで若橋の主観で描写されていると思うので、実は長かったのかもしれないけど)、刺客にさせるのはさすがに無理があるんじゃないかと思います。なので、あのときのやり取りは、過去に仕込まれた役割を起動というか、覚醒させるものだったのではないかなと。

正直最初は、催眠術云々はどうなのかと思ったけれど、フィクションなのでアリです。最初に応対してくれた人が坊さんぽかったのも、ちょっとミステリアスな感じを演出しているのではないかと思いました。

それでもって、若橋さん、終盤にたいへんなお鍋を作ってえらいことをしでかしてますが、「私は七緒をころした」などいった縦読みや、アナグラム、叙述トリックなどもルポに仕込んでいるので、別に錯乱しているわけでもないと思います。というか、理性はあるんでしょうね。他の人からみると、狂人のように見えても、彼は彼なりに冷静に考えて行動していた。

そして、いっそ誰かに全部知ってもらいたくて、ルポにいろんな仕掛けを仕込んだ。……漢字の変換ミスは気づいたのなら直しなさいよと文章を書く人なのでしょうとツッコミ入れつつも。

七緒を「胴なし女」と言うあたりは、カミュの刺客としての意識が強く出ているけれど、でも、やっぱり愛してしまったのも紛れもない事実なんだろうなーと。最終的に刺客としての自分と、七緒を愛する自分が、行動に矛盾を起こしてしまい、それをどうにか整合性を取ろうとして、お鍋を作ってしまったりしたのではないかと。そして最後を自ら命を絶つ道を選んだ。

お鍋を食べてから、ずっとだんまりだった七緒がまた口を開き始めた、という考察を読んで、ああ…と思いました。

 

おまけで、個人的に感じたのは、神湯さんは「別に誰もそこまでしろと入ってない」って思ってんじゃないかなあと。信望者が暴走して、逆に事件揉み消しとかで、面倒な目にあってたりもするのでは…。

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